私は歴史が好きですが、主として西洋史を中心に関心を持ち、その文明の大元となる古代ギリシャの
文明にはひと方ならざる興味をもっていました。
あらかたの関連資料に目を通した後、自然に次の段階に関心がひろがりました。
西洋文明(古ヨーロッパ)の始まりはいつごろ、どこで歴史に登場したのだろうかということです。
その前はどうだったのだろうか。
道具類などは新石器、旧石器の時代と分別できますが、それらを使いこなしながら、くらしを維持して
きた人間はどういう人間なのか。
そしてそこにどいう文化があったのか。
後述のクルガン文化遺跡からの出土品
一方で日本のアマテラスをはじめ、世界各地の古い伝承に登場するのは、まず女神で、大女神たちに
よって国が開き、文化が栄えたのは何故か。その塑像がいたるところにあるのは何故か。
現代の価値観に反する文化はどこえいったのか。いつも疑問に思って居ました。
現代文明の根元となる人類について、7万年前アフリカを旅立ったホモサピエンスのことは、かなり知ら
れていますが、その時地球上には、すでに先着の人類が居り、活動を始めていました。
それは小規模であっても独自の文化を持ち、やがて後続して登場する他の人類グループにとって変わ
られるようになり、その文化は発展し各地域に文明の花を開かせました。
男性は狩りをし、女性は補助的な存在だったと言われていますが、最近の発掘では女性も狩りをしてい
たことがわかり、男女の役割文担に異論が出始めています。
(古ヨーロッパ)歴史の流れを解明したのが、リトアニア出身の女性考古学者マリア・ギンブタスでした。
ヨーロッパの諸言語に通じるマリア・ギンブタスは東ヨーロッパ、中央ヨーロッパ、バルカン、エーゲ海地
方の先史考古学のフイールドで、40年に渡って研鑽を積み、多くの出土品を通して、登場した文化を
「クルガン文化」と名付けました。
それは長年のヨーロッパ先史学での「未開なヨーロッパがオリエントの文明によって開花された」という
歴史観に大きな影響を与えました。
マリア・ギンブタス
ギンブタスの著書「古ヨーロッパの神々」
ギンブタスは、それまでの多大な発掘成果をもとに墳丘「クルガン」を持った「文化」を仮に「クルガン文化」
と呼び、クルガン型の墳丘墓がヨーロッパへ伝播していったことをつきとめました。
それまでの先史ヨーロッパの繁栄の定説となっていたオリエント文化の影響をバルカン地方、ドナウ河地
方に発展していた初期
農耕文化の影響から脱し、より古いバルカン地方、ドナウ河地方の影響によるものと断定できました。
その後にミノア・ミケナイ・クレタと文化が続いていきます。
クルガン文化の地図
ギンブタスを支持する研究者たちは、クルガン文化には、紀元前5千年紀から紀元前3千年紀に中央ヨ
ーロッパやヨーロパ南東部に居住していた原インド・ヨーロッパ語族の民族的特徴が反映されていると
考えています。
(原インド・ヨーロッパ語族とは インド・ヨーロッパ語族(印欧語族)の諸言語に共通の祖先(祖語)として
... これを原インド・ヨーロッパ民族(原印欧民族)という )
数々の謎は解明されたわけではありませんが、マリア・ギンブタスという一人の傑出した女性考古学者
によって論争がはじまったばかりです。
私もこの「古ヨーロッパの神々」という分厚い本の一部を理解したばかりです。
その本を抱えてさまよっていますが、いつかは誰かが総てを解明してくれる日まで楽しみに待ちわびて
いるところです。
※資料としてギンブタスの著書「古ヨーロッパの神々」から引用しました。